注連引の大蛇作り


2006年(平成18)10月18日(水)

新羽町の注連引き百万遍の大蛇作りを取材・体験した。

・会場 小山清作さん宅の庭(新羽町)

・時間 13時~15時20分くらいまで

・参加者 新羽町連合町内会の「注連引き百万遍保存会」のメンバー(会長は西方寺の伊藤増見住職)と新羽小学校の校長・3年生の担任教員・平井など計17名

・庭先には大きなブルーシートが敷かれていた。見学に来た人も含めて計17名を3組に分けて、全員で大蛇4体を制作した。

事前の準備

・近年、新羽町では稲作をしている農家がほとんど無いので、材料のワラが手に入らない。そこで、千葉など県外も含めて、各地から良質のワラを入手する……これが一番困難。

・以前に中之久保の町内会で再興したときも、材料が入手困難になり、数年で断念した。再び途絶えようとしたとき、横浜市歴史博物館などからの要請もあり、新羽町連合町内会で「注連引き百万遍保存会」を結成し、継続することになった。

・保存会は、横浜市無形民俗文化財保存団体に認定されており、市から年間数万円の補助金が交付されている。

・用意したワラの一部を杉山神社に持って行き、御祓いを受ける。

・目や舌を作るためのカチの木を切っておく……柔らかい生木を使用する。

カチの木もしだいに少なくなって入手困難になりつつある。

作り方

基本……上あご(頭)と下あご、胴体を別々に作り、最後に合体させる。

・大蛇はワラ5本を一まとめにして顔を作っていく。家庭用のはワラ2本、小学生のはワラ1本で作る。

・制作者によって顔つきがどれも異なっていて、個性が出る。

縦と横に交差させたワラの編み方の強弱、編む段数の違いなどで顔つきが変化する。

・上あごは作り方が難しいが、下あごは比較的簡単。

・大きなワラ束4束で大蛇4体を作成した。大蛇1体の制作にワラ束1つが必要となる。

①上あご

・上あごの前半分は、縦のワラと横のワラを市松模様に組み上げていく。編み物をする要領と同じ。

・最近は、品種改良により稲の背が低くなっており、大蛇の頭を作るのには長さが不足しがちであり、作るのが難しい。対策としては、ワラの向きを交互にして1本の糸の長さを伸ばす。

・最初にワラ(A)を二つ折り(折り目が前方)にして縦糸にする。その間に横糸のようにワラ(B)をはさむ。

・Aのワラの上に横向きのワラ(C)を載せる。Bのワラの右側をCのワラの上に重ねるように折り下げる。

・Aのワラを、Cのワラをはさむように折り上げる。

・Bのワラの左側をCのワラの上に重ねるように折り下げる。

・ワラを横向きに重ねながら、上記の繰り返しで、縦横を交互に組み合わせて織物のようにしていく。

・鼻先の湾曲は、組んでいくと自然に出来る。

・9段か11段程度、奇数段繰り返すと前半分が完成する。

・頭は三角形になりエラが張るので、左右の端を折るときに、少しずつ折り方をきつくしていくと形が良くなる。

・後ろ半分は、ワラの縦横を編まずに延ばしたまま端をしばる。

②下あご

・下あごは、上あごと同様に、まず二つ折りしたワラ(A)にワラ(B)をはさむ。

・ワラ(C)をのせる。

・ワラ(B)の左右をそれぞれ折り下げる。この時、ワラ(A)は折り上げずに、そのままにしておく。

・以下は同様に、ワラを横向きに重ねながら、左右の両端を下に折ることを繰り返すだけ。中の部分は編み込まない。

・上あごより大きくなると見た目が悪いので、少し小さく作る。

・最後は、ワラを伸ばしたまま端を縛る。

・ワラが縦に伸びているのが口の中側、横を向いているのが下側になる。

③胴体

・胴体は、最初に直径10センチくらいのワラ束を3つ作り、重ね合わせて端をきつくしばる。

・二人がかりで、一人が1つのワラ束を担当する。ワラ束を右にきつくねじってロープ状にしながら、二つのワラ束を左に重ねてねじって巻いていく(左縄)。ワラが細くならないように、常にこまめにワラを挿し加えていく。

◎ワラをねじる向きと、巻きつける向きを逆にしないと、ぐずぐずにゆるんで失敗する。

・長さが3メートル位になったら胴体の原形が完成。

・残った3つ目のワラ束を、同様にしながら、胴体に左巻に巻きつけていく。

・「左縄」は、神社のしめ縄や相撲の化粧まわしなど神事の時に特有の綯(な)い方である。通常のワラ縄は「右縄」に綯(な)う。

・ワラをきつく綯(な)うと雨水が染み込みにくくなり、長持ちする。ゆるいと腐りやすくなる。

④合体

・上あごと下あごと胴体を重ねて、ワラ縄で縛る。

・最後にはみ出したワラをハサミで切って、きれいに整えると完成。

・千葉県八(やち)街(また)(?)の方では、はみ出たワラは蛇が歩くための足だといってわざと切らないとのこと。

⑤目と舌を付ける

・カチの木から、目や舌などを削り出す。 『新羽史』145~149頁参照。

・目は、直径3センチくらい、長さ15センチくらい、クイのような形をしていて、先端にヒモを通す穴を開ける。目玉は墨で黒く塗る。最近は油性マーカーを使用。

・舌は、30センチ余の長さでヘラのような形をしている。昔はベンガラで赤く塗っていたが、最近は油性マーカーやペンキを使用。

・目と舌は後日大蛇に取り付けた。目は、顔の上から口の中に刺し通す。口の中で2本の目を麻ひもでつなぎ、抜けないようにする。

・舌は、口の中に入れ、胴体のワラに突き刺す。……………後日

⑥御幣の付いた棒を背中に突き立てて完成となる。……後日

大蛇4体の飾り付け

・10月27日、新羽中学校・新田小学校・杉山神社で、昨年の大蛇をはずして、新たに飾った。

・新羽小学校では、11月11日の創立30周年記念式典の後に飾った。

ワラ蛇製作の体験学習

2006年(平成18)10月27日(金)

新羽小学校の体育館で、3年生がワラ蛇の制作体験をした。

この時に、大蛇4体を並べて展示した。

①「注連引き百万遍保存会」のメンバー12名程が、朝8時から会場の準備。

②御神酒で体を清める。

③8時50分くらいから、PTAの母親30名程にワラ蛇の作り方を講習。

・小蛇(体長約1メートル)の作り方は大蛇とほぼ同様である。

・ただし、胴体は、頭を作ったワラの端をそのまま使って、直接にねじりながら、ワラを足して綯(な)っても良い。

・舌は、ヘラを半分に切った形をしており、胴体に突き刺すのではなく、口の中で、両目と共に糸でつないで止める。

④3年生の生徒約80名は、9時半頃から11時10分まで、保存会のメンバーと母親からワラ蛇作りを習い、一人1体ずつ製作した。早くに作った子で、2体目を製作した子もいる。

・製作したワラ蛇は、各自が自宅に持ち帰る。

以上

(記録:大倉精神文化研究所 平井 誠二)