港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北)

第35回 大倉山記念館は人間だ! -その3-

久しぶりに大倉山記念館の話をしましょう。大倉山記念館は、中央館(現在のエントランスホール)と、殿堂(でんどう、ホール)、回廊(かいろう、ギャラリー)、東館、西館の五棟から出来ていて、全体で人間を表しています。
中央館は人の心を表していました(第17回参照)。その奥の殿堂は信仰心、殿堂を取り囲む回廊は信仰心を養うための修行の場でした(第18回参照)。建物の中心部分、これが人間の体でいえば一番大切な心とその奥にある信仰であるということですから、大倉邦彦はこの中心の部分を非常に重視して、装飾なども一番丁寧につくられています。しかし、心だけでは人間にはなりません。
東館と西館、その両館と中央館との連結部は、知性を表しています。東館は図書館の書庫です。大倉邦彦は、心の修業や人格教育のためには先人の残した本を読むことも大切であると考え、そうした図書を国内外から集めて、多くの人に利用してもらう目的で図書館を創りました(第26回参照)。
書庫には、アメリカから輸入した当時最新式の書架(しょか)が5層に組まれています。一層が5万冊で、25万冊の収蔵能力があるといわれていましたが、実際は全体で10~12万冊程度の収蔵能力です。東館の地階は、現在は大倉精神文化研究所の事務室や研究室となっていますが、かつては倉庫でした。驚くべきことに、その地階から書庫の五層まで、書籍運搬用のリフトが設けられていましたし(現在は消防法の関係で使用禁止)、地下の送風機室からは、ボイラーで乾燥空気を書庫内に送り、夏場の湿気を防いでいました。
西館の一階には、読書室(記念館事務室)・談話室・食堂(第10集会室)などがありました。2階南側第6集会室は所長室でした。その上の3階南側の第5集会室は貴賓室、北側の第4集会室は講義室でした。
研究室は、中央館と東館・西館の連結部の2階部分や、1階の回廊入り口に計10室ありました。貴賓室の壁には暖炉風の飾りやシャンデリアがありますし、使用目的に合わせて所長室と共に室内は豪華な装飾が施されていましたが、研究室は虚飾を廃して、研究に専念できるように簡素な造りになっていました。
中央部分に比べて、建物の東西両翼は総じて簡素な造りになっています。大倉邦彦は当時の金で約70万円の私費を投じて全くの独力で建物を造りました。現在なら数十億円に相当するのでしょうか。お金をかけるところにはしっかりかけて良いものを造っていますが、無駄なところにはお金を使わず、上手に造ってあります。
こうして、心(中央館、殿堂、回廊)の周りを知性(東館・西館・連結部)で覆うことにより、人間に見立てたのです。
大倉山記念館では、ちょうど秋の芸術祭(平成13年は10月30日~11月4日)を開催しています。一度館内を見学してみませんか。

(2001年11月号)