港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北)

第10回 横浜国際総合競技場の秘密-多目的遊水地-

2002年FIFAワールドカップの決勝戦会場に選ばれた横浜国際総合競技場は、横浜市の手により総工費603億円をかけて平成10年1998)3月に完成しました。収容人員7万人、延床面積約166,000平方メートルは国内最大規模です。しかし、この競技場も、実はさらに大規模な事業のほんの一部にすぎないのです。現在、競技場周辺は、「新横浜公園」として補助競技場(小机競技場、第41回参照)や多目的運動広場の建設が進められています。全てが完成するのは2006年頃の予定で、総面積70.4ヘクタール、市内最大のスポーツ公園となります。
横浜市の進めているこの事業には、なんと、もう一つのさらに大きな顔があるのです。それは建設省(2001年1月6日より国土交通省)が進めている総合治水対策としての「鶴見川多目的遊水地」(愛称は「新横浜ゆめオアシス」)計画です。鶴見川の洪水を調整するために、昭和59年(1984)度末から用地買収を始め、平成6年(1994)から本格的工事が進められています。総工費1千億円以上の巨費を投じて、2002年の完成を目指しています。鶴見川と鳥山川の合流点の約百ヘクタールを遊水地とし、増水時には390万立方メートルの水が溜められます。完成すると、戦後最大の大洪水にも耐えられるようになるそうです。インフォメーションセンターでは各種資料やパネルの展示もされています。
この遊水地は鶴見川増水の非常時にのみ機能するものですから、「多目的」として、平時にはその一部を新横浜公園として利用するのです。そのために、公園内に造られた横浜国際総合競技場の床はピロティ方式(高床式)となっています。また、公園に隣接する総合保健医療センターや総合リハビリテーションセンター、横浜ラポールも多目的遊水地に含まれており、全てピロティ式の建物で、平時には1階部分は駐車場スペースに使用していますが、非常時には水が溜められるようになっています。
多目的遊水地が完成すれば鶴見川の安全性は飛躍的に高まり、流域住民の数百年に及ぶ悲願が達成されます。しかし、それで全ての問題が解決するわけではありません。鶴見川の流域235平方キロメートルには現在(平成11年)約170万人の人々が生活していますが、急速に都市化が進んできています。都市化による森林や農地の減少は保水機能や遊水機能の低下を生じさせていますし、生活雑排水の増加も見逃せない問題です。第7回で紹介したように、かつての住民は鶴見川の恩恵を受け川と共に生活していたのですが、そうした記憶も薄れてしまいました。鶴見川は1998年度全国でワースト二に入る水質汚濁(おだく)の川になっています。多目的遊水地や新横浜公園の整備に合わせて、もう一度川との生活を見直したいものです。

(1999年10月号)

付記1 横浜国際総合競技場は、サッカーだけでなく多目的利用の競技場として造られています。たとえば陸上競技場としては、「第1種競技場」に認定されています。第1種競技場には、規定として第3種以上の補助競技場を併設することが定められており、小机競技場はこの補助競技場として造られたものです。

付記2 国土交通省が管理する一級河川は、全国に109水系あり、鶴見川もその内の一つです。これらの河川の水質調査で、鶴見川はBDO(生物化学的酸素要求量)平均値が2000年、2001年共にワースト3でした。ちなみに、環境省が行った2001年度の公共用水域水質調査では、全国2,544水域の河川のワーストランク外になっています。