港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北)

第12回 一つ目小僧とミカリ婆さん

昔は、12月8日のことを「ヨウカゾウ(または八日ぞ)」とか「コトヨウカ(事八日)」といい、区内では、この日に一つ目小僧とかメカリ婆さんが来るという伝承がありました。
日吉(ひよし)では、この夜は空を一つ目小僧が通って家人(かじん)に危害を加えるので、これを早く見つけるために目の多いものがよいということで、籠通し(かごとおし)を屋根の上に置いて警戒しました。子供には、今日は一つ目小僧が来るから早く寝るようにと言って普段より早く寝かせたとのことです。また、家によっては、この夜に一つ目小僧が来年の籾(もみ)を持ってくる、と言い伝えられているところがあります(『港北百話』)。
鳥山町(とりやまちょう)裏ノ谷戸(うらのやと)では、ミカリ婆さんが来ます。ミカリ婆さんは一ツ目で、目の多いものを恐れるので、ザルや篩(とおし)を棟(むね)に上げたり、戸口に出したりします。ミカリ婆さんは村々を回り箱根(はこね)まで飛んでいき、山にぶつかって海へ落ちたので箱根より西へは行きません。ヨウカドウも同じものだといわれています。また、太尾(ふとお)の棒田谷戸(ぼうだやと)では、ヨウカドウが千の眼で屋根の上を通りながらにらむので、籠(かご)か目ザルを屋根に出すといっています(『港北区史』)。
コトヨウカの「コト」とは、元来は祭(まつり)・斎事(さいじ)のコトであり、この日は、古くはコトの神が訪れて来るとして物忌み(ものいみ、外出などをつつしんで、からだがけがれないようにすること)をしていたものが、いつの頃からか本来の意味が忘れられてしまい、家に籠(こ)もっているところから、一つ目小僧やミカリ婆さんのような怪物が来ると考えるようになったものです。
一つ目小僧は、地域によっては目一つ小僧とかダイマナコ(大眼)とも呼ばれます。目を荒く編んだ竹の籠を屋外に立てるのは、怪物が、人間の家にはこのように目の多い者がいるのかと、驚いて逃げていくためだといいます。
ミカリ婆さんは、メカリ婆さん、ミカワリ婆さんとも呼ばれます。ミカリ婆さんはシマツ(始末)の神様で、12月1日に来るともいわれます。語源は、「ミカワリ」で、神道で致斎(ちさい)という重い物忌(ものいみ)に相当することばのようです。
ミカリ婆さんと一つ目小僧は、元は別ものでしたが、しだいに混同されるようになり、ミカリ婆さんが一つ目だとする伝承が生まれました。なお、ミカリ婆さんを箕(みの)借り婆さんというのは誤解です。
かつて、地域の人々は、雨乞い(あまごい)には龍神を祀り、疫病(えきびょう)除けにはワラで作った大蛇を村の入口に掛けていました(第13回参照)。また、師岡(もろおか)熊野神社の「いの池」には片目鯉(かためごい)がおり、人を化かすキツネやタヌキもあちこちに住んでいました。妖怪の話は、ゲゲゲの鬼太郎の世界だけではないのです。ぜひとも子供たちに伝えていきたいものです。

(1999年12月号)