港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北)

第29回 花水木の咲くころ

梅、桜の季節が終わると、大倉山では花水木(ハナミズキ)が咲き始めます。この花水木は、平成3年(1991)5月11日に港北区の区の木に指定されています。ちなみに、区の花はウメです。
区の木に指定された理由は、花水木の持つ若々しく、モダンな印象が好まれたからだそうです。しかし、花水木にはそれだけでなく、国際都市横浜にふさわしい親善友好の歴史があります。
1909年(明治42)、アメリカのタフト大統領夫人がポトマック河畔(かはん)に桜の植樹を計画しました。それを知った尾崎行雄(おざきゆきお)東京市長が、1912年にワシントン市へ桜の木を贈りました。これが後に、有名なポトマック公園の桜並木になります。その後、1915年(大正4)に桜の返礼として、タフト夫妻から花水木の苗木40本が日本に贈られました。これが、日本への輸入の始まりです。苗木は各地に植えられましたが、アメリカとの戦争が始まると、人々の記憶から忘れ去られてしまいました。平成4年(1992)は、桜の寄贈から80周年に当たり、日米で盛大な記念行事が行われました。また平成8年(1996)には花水木の80周年記念フェスティバルが開かれました。このように、戦後長い間忘れ去られていた花水木も、近年になり友好の花として広く関心を持たれ始めています。
花水木には、花言葉がいくつかありますが、その一つが「返礼」であり、「私の想いを受けてください」です。「忍耐」「永遠に」という意味もあります。日本における花水木の歴史は、まさに花言葉そのものでした。戦争を経て忘れ去られていた返礼が、多くの人々の忍耐と努力により再び思い出されました。花水木に託して、両国の友好親善を永遠のものにしたいものです。
花水木は、ミズキ科の落葉小高木で、学名をCornus floridaといいます。北アメリカ大陸東部の原産で、英名をAmerican dogwoodといいます。樹皮を煎(せん)じた液から犬の皮膚病の薬が採れることからドッグウッドと名付けられたといわれています。国産のヤマボウシが同属にあたることから、アメリカヤマボウシともいわれます。
花水木は、4月中旬から5月にかけて白いきれいな花を木全体に咲かせます。しかし、四枚の花弁(はなびら)に見えるものは、実は総苞(そうほう、葉の変化したもの)で、本当の花はその中央に小さく集まっている黄緑色の花心(かしん)のような部分です。秋になると、真っ赤な実がなり、小鳥たちがついばみに来ます。紅葉もきれいです。
ホームページを検索していましたら、花を天ぷらにしたり、酒に漬けたり、お風呂に浮かべたりするアイデアがありました。興味がある方は、試してみて下さい。ただし、くれぐれも公園の花水木は採らないで下さい。花水木は、仙台以南の地方では庭木として育てることができます。土壌を問わず手入れの手間もかからないので簡単です。植樹から始められることをおすすめします。
来年は桜の寄贈から90周年になります。返礼の花水木も注目されることでしょう。今から楽しみです。

(2001年5月号)

付記1 花水木は、アメリカのアトランタ市の花、ノースカロライナ州・バージニア州とカナダのブリティッシュ・コロンビア州の花に指定されています。

付記2 徳島県小松島市では市の花に指定されています。