港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北)

第41回 横浜国際総合競技場の秘密 -その2-

いよいよFIFAワールドカップの開催も近づきました。御存知の通り、横浜国際総合競技場(以下、国際競技場と略します)は決勝戦の舞台として、全世界から注目を浴びています。この競技場が鶴見川多目的遊水地の一部であることは第10回に述べたとおりですが、実は国際競技場にはもう一つ秘密があります。それが、補助競技場(正式名称は小机競技場、第10回の付記1を参照)です。常に脚光を浴びる国際競技場に対して、補助競技場は日陰の存在で、報道されることもほとんどありませんが、実はある面では国際競技場をも超える、日本一の競技場なのです。
国際競技場が、サッカーグランドとして優れた管理がなされていることは昨年(平成13年)のコンフェデレーションズカップやJリーグの試合等で定評がありますが、そのフィールド面は、多目的遊水地との関係で地上三階に作られた人工土壌ですし、客席を覆う屋根に日照を妨げられています。こうした芝生(しばふ)育成にとっての悪条件を抱えながら国際的評価を得ているのは驚異的なことです。天然の芝は生き物ですから、その上で競技をして傷つけられると元気を回復するのに時間を必要とします。そこで、国際競技場は芝生利用を年間40日前後に制限することにより、芝生をよりよい状態に保つようにしています。
一方、小机競技場は、フィールド面が地上にあり、日照を妨げるものもありませんから芝の生育条件には恵まれていますが、年間利用日数はなんと100日~120日にも及びます。全国的には、60日~80日の利用をしている競技場が多いようですが、実は通常なら30日程の利用にしないと裸地(らち)のない本当にきれいな芝生の状態を維持出来ないのだそうです。
小机競技場は、全国平均の2倍近い稼働率を維持しながら、しかも国際競技場にも負けない、時には国際競技場を上回るほどの良い芝生コンディションを維持しているのです。これは、芝生管理の専門家であるグリーンキーパーにより育成されているからなのです。国際競技場は、グリーンキーパーを常勤させている日本では数少ない競技場の一つなのです。
小机競技場は、ワールドカップの期間をはさんで5月下旬から7月上旬まで約2ヶ月間、緊急時のヘリポート利用等を除いて、閉鎖されます。その間に冬芝(ペレニアルライグラス)から夏芝(ティフトン四一九)への切り替えを行う予定です。愛情をかけてしっかり休養させた芝生は、夏休み頃にはこれまでで最高の状態になっているはずですし、さらに良い状態にしていこうと努力しています。国際競技場ではプロ等の競技を観客席から見るだけですが、小机競技場は少年サッカーチームなどアマチュアの市民もプロ選手の気分で利用できるのです。
平成12年12月の月例講話会では、グリーンキーパーの柴田智之(しばたともゆき)さんから情熱と愛情あふれる芝生育成のお話を伺う予定です。お楽しみに。それにしても、「横浜国際総合競技場」は画数の多い漢字ばかりの名前ですが、なぜ愛称が無いのでしょうか。

(2002年5月号)

付記1 横浜国際総合競技場は、横浜市が施設命名権を日産自動車へ売却したことにより、2005年3月1日から5年間は「NISSAN STADIUM(日産スタジアム)」と呼ばれることになりました。これに伴い、補助競技場は「日産フィールと小机」と命名されました。

付記2 柴田智之さんお話は、『武道精神とスポーツ精神(上)』(大倉精神文化研究所、2003年)に収められています。