閉じる

大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第115回 名所旧跡は歌にのせて -鉄道唱歌の替え歌-

2008.07.01

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北』(『わがまち港北』出版グループ、2009年7月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


最近、港北区内の鉄道が大きく様変わりしつつあります。新横浜駅では、3月15日から新幹線「のぞみ」「ひかり」の全列車が停車するようになりました。地上19階・地下4階建ての新駅ビルも完成し、3月26日には「キュービックプラザ新横浜」がオープンしました。3月30日には市営地下鉄グリーンラインが開通し、区内には日吉、日吉本町、髙田の3駅が開業しました。日吉駅では、6月22日から東急目黒線が乗り入れるようになりました。

さらに、6月14日に開業した東京メトロ副都心線(池袋~渋谷間)は、2012年度から東横線と相互乗り入れを始める予定ですし、2019年運行開始予定の相鉄・東急直通線の地質ボーリング調査が、今年1月~3月に大倉山公園入り口で行われていました。このように鉄道は日々進化し続けています。

その一方で、むかしの記念日もあります。5月18日は東横線の現区間(渋谷~横浜間)が開通して80周年の節目でしたし、9月23日には横浜線(ハマ線)が開業100周年を迎えます。東横線では昨年から各種イベントが行われていますし、横浜線も5月8日に「横浜線開通100周年を祝う沿線議員連盟」が設立されるなど秋に向けて、活発な動きが出てきています。区内では、菊名地区センターがハマ線100周年の各種記念イベントを進めており、その1つに横浜線の鉄道唱歌の募集を始めています(8月31日締め切り)。

鉄道唱歌は、明治33年(1900年)に大和田建樹(「たてき」ともいう)作詞・多梅稚作曲の「汽笛一声新橋を...」の東海道篇が有名ですが、この歌は山陽、九州、奥州等へと続き全334番からなる長い歌です。これの替え歌となると、全国各地で多数作られており、その数はとても調べきれるものではありません。横浜線でもかつて作られたことがありました。

列車の汽笛はさえわたり おきのみねの白幡や トンネル抜けて西寺尾 菊名の川をおりわたり
松のこずえか小机か 左に見えるかわた川 右に見えるが城山よ

以下は不明です。『港北区史』より引用しましたが、少し歌詞が異なっている本もあります。

この歌は、郷土史家の相澤雅雄さんが同じく郷土史家刈谷定吉さんからの依頼により、昭和53年(1978年)に新吉田の萩原大助さんから聞き取り調査をしたもので、作詞者は初代小机駅長といわれています。横浜線は明治41年(1908年)の開業ですから、横浜線開業70周年の年に埋もれていた鉄道唱歌が発見されたとして、昭和53年9月30日付けの『神奈川新聞』に大きく報道されました。相澤さんから切り抜きのコピーをいただきました。

横浜線の鉄道唱歌が作られていたのですから、東横線のがあってもいいだろうと思い、以前に探したことがあります。すると、インターネットで、東横線にも鉄道唱歌があるらしいとの情報を見つけました。しかし、何年も探したのですが歌詞にまでたどり着けず、一時諦めかけていました。ところが、その話を『菊名新聞』の大崎春哉さんにしたところ、『とうよこ沿線』に掲載されていることを教えてくださいました。同誌によると、作詞家は辻村功さん。「鉄道好きが高じて駅名を織り込んだ50番もの東急鉄道唱歌を作詞」されたとのことで、その東横編(渋谷から桜木町まで)全12番が紹介されています。歌詞の中には、慶應大学、綱島温泉、鶴見川、大倉山の梅林、菊名弁財天といった区内の名所が詠み込まれています。著作権がありますから、歌詞の紹介は省きます。興味がある方は、雑誌『とうよこ沿線』第15号の46ページをご覧ください。

9月には横浜線の新しい鉄道唱歌が発表されます。どなたか、沿線の名所旧跡を詠み込んでグリーンライン・ブルーラインの鉄道唱歌を作ってみませんか。

記:平井 誠二(大倉精神文化研究所専任研究員)

(2008年7月号)

シリーズわがまち港北の記事一覧へ