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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第132回 記念誌から未来を

2009.12.01

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北2』(『わがまち港北』出版グループ、2014年4月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


今年一年を振り返って10大ニュースをかぞえる季節になりました。港北区の10大ニュースとしては、めでたい方では、必ず区制70周年が入るでしょう。9月27日、港北公会堂で港北区制70周年記念式典が挙行され、参加者へは式次第と『港北区の境域と記憶-区制70周年記念誌1939~2009-』が配られました。この本には、小机の浅田家(第129回で筆者には分かりませんでした)について詳しく紹介されていました。70周年記念誌としてはもう一冊、『水と緑の学校生きもの図鑑』も今年3月に刊行されています。

筆者の個人的な10大ニュースとしては、区制70周年アニバーサリー提案事業として、この連載の第1回から120回までをまとめた記念誌『わがまち港北』を7月に出版していただいたことが第1に挙げられます。筆者の職場がある横浜市大倉山記念館が竣工から77周年、記念館としての開館から25周年を迎え、「大倉山秋の芸術祭」も25回目となり、記念誌『秋芸25』が作られたこともうれしいニュースの1つです。

そこで、過去の記念誌を調べてみました。

港北区は昭和14年(1939年)4月1日に誕生しましたが、それから15年後、昭和29年(1954年)の『港北区勢概要』(第118回参照)が「区制施行15周年記念版」となっています。大綱小学校校庭で開かれた記念式典では、喜寿(きじゅ)(77歳)を迎えた飯田助夫翁(おう)が自治功労者として表彰されています。

昭和33年(1958年)には『横浜開港百年と港北区』が刊行されました。今年は開港150周年と区制70周年が共に祝われましたので、その50年前なら昭和34年のはずですが、横浜開港百年祭記念式典は昭和33年5月10日に挙行され、区制20周年記念式典は昭和35年10月20日でした。昭和35年版の要覧『港北』は、「区制20周年・総合庁舎落成記念」と謳(うた)っています。総合庁舎とは、菊名に造られた旧庁舎(第124回参照)のことです。ちなみに、昭和53年(1978年)に現庁舎が完成したときの要覧は「港北区新総合庁舎落成記念」と記されています。

昭和39年(1964年)の『区勢概要』は「区制施行25周年記念」、昭和44年(1969年)版は「区制施行30周年記念」となっています。

昭和62年(1987年)、『未来都市コーホク』が刊行されました。この本は、2年後の区制50周年をひかえて、「まだ一部に田園風景が残る、緑豊かな若々しい〝まち〟」である港北の「輝かしい未来に向けたまちづくりのきっかけ」として編集されました。

そして、平成元年(1989年)の区制50周年には、『港北50&TODAY』が刊行されています。この年は、市政100周年、開港130周年でもありました。バブル景気も手伝って、今年以上に盛大な記念行事が行われました。この頃の横浜市は、新総合計画「よこはま21世紀プラン」を進めていました。21世紀を展望した街づくりと地域コミュニティづくりをめざしたもので、港北区は「自然と調和した活気ある街」づくりを目指していました。

区制55周年になる平成6年(1994年)は、港北区から都筑区が分区した年でもありました。この年刊行された『新・港北物語-新港北区誕生・区制55周年記念誌-』の巻末には、「港北区の将来像」として、策定中の「ゆめはま2010プラン 港北区計画案」が掲げられています。長期ビジョンとしてこの時に遠い目標とされた2010年は、もうすぐそこに迫っています。

港北区制60周年記念としては、『港北ウォーキングガイドてくてくこう歩(ほ)く』(平成12年)が刊行されています。

区役所以外から刊行された記念誌には、かつて日吉本町に本社があった横浜港北新報社から『われらの港北 十五年の歩ミ(あゆみ)と現勢』(昭和29年)と『われらの港北 30年の歩み』(昭和42年)があります。15周年記念誌は記事の正確さに少し疑問がありますが、内容の豊富さと、「ラヂオ・テレビのお医者さま 修理は 妙蓮寺駅前岩永電気商会」「100円天国 大衆の茶の間 つなしま温泉行楽園」など当時の広告が多数掲載されているのが魅力です。横浜港北新報社は、この2冊の記念誌の間に『続われらの港北』(昭和32年頃刊行か)という本を出版していたようですが、図書館にもなく筆者は未見です。

どの記念誌も、過去を振り返ると共に、「今後の港北は如何(いか)にあるべきか」を課題にしています。その時々の人々が港北区の将来に何を望んでいたのか、それがどのように実現したのかしなかったのか、新しい年に向けて歴史を繙(ひもと)き、そこから未来を考えていただきたいと思います。

記:平井 誠二(大倉精神文化研究所専任研究員)

(2009年12月号)

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