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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第218回 祝! BELCA(ベルカ)賞受賞

2017.02.01

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北3』(『わがまち港北』出版グループ、2020年11月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 正月早々、大豆戸町(まめどちょう)の中島志郎さんから、とても目出度いニュースを教えていただきました。大倉山ハイム3号棟~8号棟住宅が、昨年(2016年)5月16日、第25回BELCA(ベルカ)賞ロングライフ部門を受賞したというものです。
 BELCA 賞とは、主催者である公益社団法人ロングライフビル推進協会(Building and Equipment Long-life Cycle Association)がその頭文字を取って名付けた賞です。ビルのロングライフ化に寄与することを目的として、既存の建築物を表彰する制度で、平成3年(1991年)に創設されました。ロングライフ部門と、ベストリフォーム部門があります。
 ロングライフ部門とは、「長期使用を考慮した設計のもとで建設されるとともに、長年にわたり適切に維持保全され、さらに、今後、相当の期間にわたって維持保全されることが計画されている、模範的な建築物」に授与される賞です。公共施設や学校、宗教施設等の建築物が受賞することが多く、集合住宅が受賞することは、とても珍しいことです。
 大倉山ハイム3号棟~8号棟は、昭和54年(1979年)に竣工しました(ちなみに、1、2 号棟の竣工は昭和48 年)。大倉山ハイムにお住まいの中島さんからは、今でも大切に保存されている入居募集のパンフレットを見せていただきました。表紙をめくると「大倉山で暮らしませんか」のフレーズが目に入ります。最寄り駅が大倉山駅ということで大倉山ハイムと名付けられたようですが、住所は大豆戸町です。6棟636戸からなる大規模分譲住宅で、大倉山駅から南西へ徒歩10分程度の住宅街に位置しています。
 大倉山ハイムは、一つの団地の土地全体を一つの敷地とみなして建築規制を緩和する制度(一団地認定)と、横浜市環境設計制度の総合的開発を利用して、建物を10階建て(一部9階建て)に高層化し、約70%の空き地を生み出し、広い公園スペースを確保しました。また、インフラ設備を地下に埋設し、電柱やケーブルの無いすっきりした景観を生み出しています。竣工時に30年間の長期修繕計画を策定し、その後も20年間の修繕計画を実施しています。こうした点が評価され、今回の受賞に至りました。
 中島さんは、公共施設や新幹線の新横浜駅に近いことが魅力で購入を決めたそうです。この辺りは、かつて字八反野(あざはったんの)のと呼ばれた畑地でした。入居当初は、周辺にまだ農地が点在しており、通勤する中島さんは、釣り堀「新横浜養魚」や、梅林のある小さな公園、ナシ畑などの脇を通って大倉山駅まで通っていたそうです。
 ヨークマート大倉山店は昭和59年(1984年)の開業ですからまだ無くて、奥様は大倉山駅前のサンコー(1969年開業、現マルエツ)へ買い物に行っていました。
 中島さんからは、もう1つ情報を教えていただきました。「横浜市大倉山記念館が第6回BELCA賞ベストリフォーム部門を受賞している」というものです。恥ずかしながら、筆者は知りませんでした。
 ベストリフォーム部門とは、「社会的・物理的な状況の変化に対応して、今後の長期的使用のビジョンを持って、蘇生させる、もしくは飛躍的な価値向上等をさせるリフォームがなされた、模範的な建築物」を選ぶ賞です。
 大倉精神文化研究所の本館として建てられた大倉山記念館は、市民利用施設として新たな役割を付加するため昭和59年に改修され、平成3年に横浜市指定有形文化財に指定されました。BELCA賞を受賞したのは、平成8年(1996年)のことです。受賞理由についてロングライフビル推進協会に問い合わせたところ、『BELCA NEWS』60号に、改修工事で外観や内装のデザイン等を損なわないように配慮されたことと、日常の利用状況が「建物や周辺環境に対して、横浜市指定文化財として愛情の込められた日常運営が行われていることが推察され、当建物の昭和初期に於ける建設意図を越えてこのように熱意のある市当局・記念館管理者と市民の手によって活用されている事実は、当賞に相応しい建築と認められた」と説明されていることを教えていただきました。
 昨今は、地球環境への配慮や、物を大切にすること、伝統や文化を継承することなどがこれまで以上に強く求められています。そのような時代に、港北区内で2ヵ所、それもすぐ近くにある建築物が、関係者の継続的な努力によって、BELCA賞の2部門をそれぞれ受賞していることを知り、嬉しい正月となりました。

記:平井 誠二(公益財団法人大倉精神文化研究所研究部長)

(2017年2月号)

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