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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第79回 郷土料理を探そう―その1―

2023.04.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『大倉山STYLEかわら版!』(令和5年4月号)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 地域の小学生から「サンマーメン以外の郷土料理はあるの?」との質問を受けました。皆さんはどう答えますか。筆者はふさわしい料理名が思い浮かびませんでした。

 そこで、古老の方々に伺ったところ、けんちん汁とおなめが出てきました。けんちん汁は、大根や人参など地元産のたくさんの野菜を切って油で炒めてから煮込みます。その始まりは諸説ありますが、鎌倉の建長寺が発祥ともいわれています。

 おなめは、地元産の大豆と麦麹を使用した発酵食品で、もろみ味噌に似ています。農繁期の農家では、手軽なご飯の友として重宝されました。江戸時代に、秩父地方で生まれたといわれています。

 どちらもこの辺りだけの郷土料理とはいえませんね。

 そもそもサンマーメンは郷土料理なのでしょうか。サンマーメンは、野菜のあんをかけたラーメンで、昭和になって横浜中華街で生まれたそうです。神奈川県以外では作られていませんから、県の郷土料理のように思えますが、家庭では作りませんよね。

 では、郷土料理とは何でしょうか?

 郷土料理を調べていたら、農林水産省のサイトに「うちの郷土料理」というページがありました。2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことがきっかけのようですが、ここでは、郷土料理を「全国各地で受け継がれてきた地域固有の多様な食文化」と曖昧に定義しています。神奈川県は23件の登録があり、横浜はサンマーメン、牛鍋、シューマイが入っていました。

 これとは別に、文化庁が2021年度から「100年フード」を提唱し、募集しているのを見つけました。こちらはもう少し具体的に、①伝統の100年フード(江戸時代から続く郷土の料理)、②近代の100年フード(明治・大正に生み出された食文化)、③未来の100年フード(これから100年を目指す)の3部門に分かれています。

 ①が元々の郷土料理で、しだいに②も含むようになったという認識なのでしょう。

 神奈川県では、①に小田原蒲鉾、曽我の梅干し、厚木のとん漬、大山のきゃらぶきの4件が、②にサンマーメンが入っています。蒲鉾や梅干しは、郷土料理というよりも郷土食材でしょうか?

 郷土料理を調べていくと、主に次の3つの条件が出てきます。

 1.食材や調理法に地域性がある

 2.地域の歴史や文化に根ざしている

 3.他地域では作られていない

 全ての条件は満たしていなくても郷土料理と呼ばれているものも多いので、明確な定義は無く、自分たちで「これは郷土料理だ!」と言ったもの勝ちなのかも知れません。

 次回はこの3つの条件から、港北区域の郷土料理を考えてみます。(S.H)

サンマーメン.jpgサンマーメン(農林水産省ウエブサイト「うちの郷土料理」より)

(2023年4月号)

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