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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第235回 戦争の記憶と記録を未来へ―「終戦秘話」の振り返りを兼ねて―

2023.08.01

文章の一部を参照・引用される場合は、『楽遊学』(港北区区民活動支援センター情報誌)の掲載号を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 シリーズわがまち港北では、毎年8月の原稿を中心に太平洋戦争に関わる話題を「終戦秘話」として取り上げてきました。「終戦秘話」は平成11年(1999年)8月を初回として、これまでに25回掲載しています。終戦から今年で78年が経ちます。戦争の記憶を継承していくために、記録を残し伝えていくことは不可欠です。連載の中断を挟んで最新の「終戦秘話」掲載からも既に6年が経ちました。読者の方の中には存在を知らない方もいらっしゃると思いますので、振り返りも兼ねて過去の「終戦秘話」をご紹介します。

 下記は25回の「終戦秘話」の一覧です。シリーズわがまち港北の掲載回、掲載時の題名、内容に関係する地区名の順に記しました。全て大倉精神文化研究所のホームページでお読み頂けます。また、111『わがまち港北』2009年)、1216『わがまち港北2』2014年)、1725『わがまち港北3』2020年)に掲載しています。

  1. 8回 終戦秘話 幻の神奈川高等学校(大倉山)
  2. 20回 終戦秘話2 日吉台地下壕(日吉)
  3. 32回 終戦秘話3 日誌が語る戦争の日々(大倉山)
  4. 33回 終戦秘話4 日誌が語る横浜大空襲から終戦(大倉山)
  5. 44回 終戦秘話5 大倉山と海軍気象部(大倉山)
  6. 56回 終戦秘話6 慶應義塾と大倉山(日吉・大倉山)
  7. 69回 終戦秘話7 米ソの暗号を解読せよ!(大倉山)
  8. 80回 終戦秘話8 米軍機の置きみやげ(綱島・菊名・城郷・篠原・大倉山)
  9. 92回 終戦秘話9 国民学校と学童疎開(大倉山・新吉田・新羽・日吉・城郷・高田)
  10. 104回 終戦秘話10 大倉山の照空灯(高田・篠原・城郷・大倉山・菊名・大曽根)
  11. 116回 消えた鐘の音 -終戦秘話その11-(大倉山・新吉田)
  12. 128回 配給は...、もらえるの? -終戦秘話その12-(大倉山・菊名・樽町・綱島)
  13. 140回 戦争体験の記憶と記録 -終戦秘話その13-(大倉山・新吉田・篠原・菊名・日吉・新羽)
  14. 152回 岸根公園の接収 -終戦秘話その14-(城郷)
  15. 164回 海軍気象部と横浜大空襲 -終戦秘話その15-(大倉山)
  16. 165回 海軍水路部の疎開 -終戦秘話その16-(大倉山)
  17. 188回 日吉台地下壕の現在・過去・未来 -終戦秘話その17-(日吉)
  18. 189回 日誌が語る日吉の連合艦隊司令部 -終戦秘話その18-(日吉)
  19. 200回 大倉山への資料疎開よもやま話終戦秘話その19−(大倉山)
  20. 201回 歓成院裏山の防空壕 −終戦秘話その20−(大倉山)
  21. 212回 石野瑛(あきら)と武相中学校 -終戦秘話その21-(篠原)
  22. 213回 武相中学校と戦争 -終戦秘話その22-(篠原)
  23. 214回 芝浦工業大学の大倉山運動場と幻の太尾校舎 -終戦秘話その23-(大倉山)
  24. 224回 横浜ゆかりの歌手 渡辺はま子さんと菊名 -終戦秘話その24-(菊名)
  25. 225回 古い資料からの新たな発見 -終戦秘話その25-(大倉山・篠原)

 地区別で見ると、大倉山の話が半分以上を占めます。これは筆者の勤務先の研究所が大倉山にあり、当初は研究所の資料から原稿を書く機会が多かったためです。また、日吉には連合艦隊司令部地下壕をはじめ、海軍関連の施設が多数存在したことから、日吉の話も多くなっています。一方でまだ取り上げていない地域もあります。区内全ての地区の「終戦秘話」を原稿にするのが筆者の今後の目標です。

 戦争に関する記録としては、横浜の空襲を記録する会が編集・刊行した『横浜の空襲と戦災』6(197577)があります。また、『伝えたい、街が燃えた日々を―戦時下横浜市域の生活と空襲―』2012年)にも貴重な戦争体験談が掲載されていますし、巻末には編者の小野静江さんによる大倉山周辺を中心とした東横線沿線の空襲に関する調査成果も掲載されています。横浜市立図書館や研究所附属図書館で所蔵していますので、お手に取ってご覧ください。他にも、学校の記念史などに卒業生の回想として戦争中の話が載っていたりもします。

 残した記録も目にする機会がなければ意味を持ちません。戦争に関する様々な記録を紹介することも、戦争の歴史を未来につなげていく一助になると信じています。そして終戦秘話はこれからも続いていきます。

記:林 宏美 (公益財団法人大倉精神文化研究所図書館運営部長兼研究員)

(2023年8月号)

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